flavorsour 第一章

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確かに私の両親はお見合い結婚だった。母方の祖父と父が大学の先輩後輩だったという縁で随分歳の離れた母を祖父が父に紹介して──それから私たちには窺い知れない紆余曲折があって本当の夫婦になったと訊いている。 (まぁ……未だに惚気られるのは困りものだけれど) 一瞬両親の仲睦まじい姿が脳裏に浮かんだ。 「あ、それね、伊志嶺くんから訊いたの。なんか色々教えてくれるんだよね、家のこととかご両親のことや──勿論、双子の妹のことも」 「!」 (蓮、一体どういうつもりで?!) どうやら蓮にとってこの榛名さんという先輩は相当信頼している位置にある人なのだと見えて来た。 あの人見知り屋でコミュ障の蓮がここまで自分のことや家族のことを話すなんて…… (そんなに心を開いている人なの?) 何故か急に目の前の人はやっぱりいい人なのかも──と思い始めてしまった。 蓮がそれほどまでに信頼している人ならば恐らく私にとってさほど害のある人ではないのかもしれない。 そして何よりも蓮のことが好きという点は私にとっては相当評価の高いポイントになっていた。 勿論、私のいうとはあくまでも人としてという意味であって欲しいのだけれど。 思えば蓮の良さを分かってもらうために始めた猫被り人生。 四半世紀生きて来て、昔ほど蓮のことを悪くいう人間がいなくなって来たことで本当ならもうこの巨大な猫を取り払ってもいいのだろう。 ──だけど……それをするにはあまりにも長く背負い過ぎた。
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