flavorsour 第一章

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私には双子の兄、蓮がいた。双子といっても二卵性なので顔は全く似ていない。蓮は父親そっくりの強面で大人しい性格からあまり積極的に喋るタイプではなかった。 その見た目と性格から蓮は家族以外の人間からは可愛げがなくて怖い子どもという間違ったイメージを持たれた。 それに反して私は母親譲りの顔立ちと愛想の良さで幼少期から散々『可愛い』だの『天使』だのと言われ続けて来た。 そんな私が『蓮は見た目はこんなでもとってもいい兄です』と擁護すると蓮に対する風当たりは少し緩んだ。 そんな反応に子どもながらに私がいい子であればあるほど蓮を守ることが出来るなんて想いに駆られた。 少しでも多くの人に蓮の本当の姿を知ってもらいたいと思った。蓮は強面で寡黙だけれど本当はとても優しくて愛情深い素晴らしい兄なのだと。 ──そんな布教活動はいつしか私からを奪って行った 巨大な猫を被り続け、家族以外の他人には本当の自分を押し殺した偽物の伊志嶺蘭を見せ付けて来たのだった。 勿論、猫を被り始めた頃は偽物の自分に対し嫌気が差し、どうしてこんなことをしているのだろうと思い悩むこともあったけれど、そういうものは成長する毎に慣れてしまって、すっかり偽りの伊志嶺蘭で生きることが当たり前になってしまっていた。
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