flavorsour 第一章

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じんわりと鎮痛剤が効いて来たかと思った頃に新居となるマンションに着いた。 「あ、蘭ちゃん」 「榛名さん、おはようございます」 一足先に部屋に入っていた彼が私を見つけて声をかけて来た。 「おはよう。いやぁ、なんか色々凄いね」 「凄いとは」 「だってなんかさ、まるでモデルルームみたいな内装だよ、俺たちの新居」 「……」 (『俺たちの新居』って……なんかちょっと) 訊き慣れないせいかその言葉に少し居心地が悪く感じた。 (……しかし) 確かに足を踏み入れたリビングは如何にもインテリア雑誌に載っていそうな雰囲気のもの。 (あぁ、そういえばお父さん、プロの人に任せたとかなんとか言っていたっけ) 私たちが仕事で忙しいのを見越してインテリアコーディネーターの人に家具の配置などは任せたと話していたことを思い出した。 「あぁ、それでこんなに如何にもな感じなんだね」 「……え」 「ん?」 「あ……いえ」 (まただ) 私がぼんやりと考えたことにタイミングよく榛名さんが答えることは今までにも何度かあった。そう、まるで私が考えていることを分かっているような── (……いやいや、それはないでしょう) そうだ、そんなことはあり得ない。たまたま私がそのようなことを思った表情になったのだろう。 (って、それもなんだか問題だけれど!) 要するに感情が顔に出易いということの裏付けになってしまう。
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