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(ポーカーフェイス蘭ちゃんを思い出せ!)
懸命に頭の中で猫被りスキルを発動していると何故か突然彼が噴出して笑い始めた。
「ぷ、ふ、ははははっ」
「!」
(な、何よ、突然!)
訳が分からないその様子を私はただ唖然と見つめるしかなかった。
しばらくの後、ようやく笑いが治まった彼は私の前に掌を差し出した。
「?」
「これからよろしくね、蘭ちゃん」
「あ、はい」
「あと、俺の前ではあんまり気張らなくてもいいよ」
「は?」
「なんのために俺が此処まで連れ出したのか──追々分かってくれたらいいからさ」
「……」
「とりあえずふたりの新生活のお祝いに美味しい物でも食べに行こうか」
「……」
戸惑う私の手を取りブンブンと握手したかと思ったらものすごくいい笑顔で微笑まれた。
(今のってどういう意味?)
彼の言葉に妙な引っかかりを感じる。
『なんのために俺が此処まで連れ出したのか──』
(なんのためにって、そんなの蓮のためでしょう?)
蓮との繋がりを強くしたいから妹の私を手元に置いておきたい、そういう意味で此処までの茶番を繰り広げたのでしょう?
答えは至極簡単だった。──なのに
「蘭ちゃん、なに食べたい? あ、引っ越しといったら蕎麦か」
「……」
「そういえばここら辺の店舗事情よく把握していないんだよなぁ。よかったら散歩がてら散策してみない?」
「……」
「蘭ちゃん?」
「……そう、ですね」
「よし、決定」
「……」
(本当……よく分からない人)
──こうして予想だにしなかった日々が嵐の如く幕を開けたのだった
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