flavorsour 第二章

3/51
前へ
/402ページ
次へ
赤く染まった室内。 其処はいつも両親と共に自分が笑い合っていたリビングだった。 だけど今はそんな面影は一切消え失せていた。 『……に……き』 項垂れている父に覆いかぶさる様に抱きついていた母がゆっくりと此方を向き、何かよく分からない言葉を発した。 何を言っているのか分からずただ茫然と母の姿を見つめた。 『……めん………だっ……から……』 徐々に小さくなって行く母の言葉を聞き取りたくて必死に耳を澄ませるけれどやがて母の口からはか細い呼吸音しか出なくなった。 ──その時だった 突然聞こえた母の声。 先ほどとは違ってとても鮮明に聞こえた言葉。 母が何を言いたかったのか、俺はその時知った。 そして       絶望した 知りたくなかった     母と   父のこと ──全てが終わり、そして全てが始まったのは俺、榛名邦幸がもうあと数日で11歳を迎えるこの日からだった。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1806人が本棚に入れています
本棚に追加