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『──さん』
「……」
『──な、さん』
「……ん」
「榛名さん!」
「っ!」
突然肩を揺さぶられた振動で覚醒した。開いた目の先には赤く染まった室内。
(──は?!)
一瞬にして嫌な汗が背中を伝って行った。
「こんな処で寝ないでください」
「……」
聞こえた声と共に赤く染まっていた室内は一瞬にして明るい光の照るものに変わっていた。
(あれ……此処って)
まだ少しぼんやりとしている頭の中を懸命に整理していると俺に声をかけた彼女が怪訝そうな表情をしたのが見えた。
「リビングのソファで寝るのは止めてください」
「……」
「寝るならご自分の部屋でお願いします」
「……」
「私と住むのなら共有スペースでの気の使い方も覚えてください」
「……ふっ」
思わず笑いが込み上がった。相変わらず彼女と話をするのは楽しい。
「また……何がそんなに可笑しいんですか」
「ふはっ」
「本当に失礼な人ですね。私、そんなに可笑しなことを言っていますか」
「ふふふっ。ごめ……君は何も悪くないよ」
「だったら何故いつも笑うんですか」
「ははっ。そうだね、なんでだろうね」
「訊いているのは私です!」
そう言いながら頬を膨らませた彼女は少しだけ本来の顔を見せた。
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