flavorsour 第二章

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オレノシッテイルオジョウサマッテ ツキアッテキタヒトトイウイミナノカシラ (それに関してはわざわざ言うことじゃないかな) 答えられること、られないことの選別は慎重にしなければいけない。 今はまだ知られるわけにはいかない。悟られないように見極めをしなければいけない。俺が何も答えなければ彼女はその性格からして深堀をしないから。 「──夕食はどうしますか。お互い帰宅時間はバラバラでしょうし」 (ビンゴ) 俺の思った通り、彼女はお嬢様発言に関して追及することはなかった。 (あぁ、やっぱいいなぁ) 彼女の心は何処までもクリーンでとても居心地がいい。 「榛名さん、訊いていますか?」 「あ、うん、訊いているよ。そうだな……早く帰れる方が作っていいんじゃないかな」 「作るとはふたり分、ですか?」 「そう。何、蘭ちゃんって孤食主義者?」 「そういう意味ではありません。早く帰れる方というと場合によっては榛名さんが作ることにもなりますが」 「うん、作るよ」 「料理、出来るんですか?」 「あ、何、そんな心配? そりゃ一通り出来るよ。ずっとひとり暮らしして来たんだから」 「……そうですか」 「あれ、俺って出来なさそうなイメージ?」 「はい──あ、いえ、しなさそうというイメージで」 「……」 (そこは本音が出るんだ) 少しずつ軽口が叩けるようになって来ている彼女の変化が嬉しいと密かに思った。
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