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あまりにも長い間誰からも好かれる見た目通りの素晴らしい女性に擬態して来たために本人である私自身ですら今の私が本当の私なのかもしれないと錯覚することがあった。
しかし蓮が結婚した相手──花咲里の出現によって少しずつ本来の私を取り戻しつつあった。
兄嫁となった花咲里とは幼少期に一度出会ったことがあった。別の小学校に通っていた蓮が初めて家に連れて来た友だちだった。
私は驚いた。だって蓮の口から『友だち』という言葉を訊いたのがその時初めてだったから。
それに花咲里と一緒に遊んで分かった。花咲里は他の人とは違うと。蓮を見た目で判断しない初めての子だと分かった瞬間、花咲里のことが大好きになった。
もしかしたら花咲里は素の私を見ても何も言わないのかもしれない。そんな期待でドキドキした。
──しかし花咲里はそれから二度と家に遊びに来ることはなかった
家の事情で転校したのだと訊いた時は蓮同様とても悲しかった。蓮にとっても私にとっても、花咲里という存在は既にかけがえのないものになってしまっていたから。
しかしまさかその花咲里が十五年後、蓮の結婚相手として私の前に現れるとは思わなかった。まさに青天の霹靂だった。
蓮と花咲里の間に何があったのかは分からないけれど、兎に角こうやって花咲里と親戚になれたことを心から喜んだのだった。
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