flavorsour 第二章

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最初に異変を感じたのは病院に来てから数日後。 毎日様子を見に来てくれていた最初に出会った警察官と何となく親しくなったような頃。 「邦幸くん、りんご食べる?」 「……」 相変わらず言葉が発せなかった俺は緩く首を縦に振った。 「分かった。ちょっと待っててね」 まだ若いだろう彼女はぎこちない手つきでりんごの皮を剥き始めた。──その瞬間 アァ…… シッパイシタナァ (……え) コウイウノ ムイテイナインダヨネ アタシ (……何?) カワムキダケニムイテナイ ナンテネ (っ!) 思わずブッと噴出してしまった。 「え、ど、どうしたの、邦幸くん」 「……」 俺の様子がおかしかったのかその警察官は慌てて傍にやって来た。 「突然咽ちゃって……はっ、気持ち悪いの?! 待ってて、お医者さん呼んでくるから!」 そう言って彼女は慌てて病室を後にした。 (いや、別に気持ち悪いわけじゃなくて) 突然頭の中に響いたしょうもないギャグに思わず笑いが込み上げただけのことだったのだが。
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