flavorsour 第二章

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退院した俺は父の妹──つまり叔母さんに引き取られた。 それに伴い通っていた学校も転校することになり俺の生活はあのクリスマスイブから一変した。 生活環境は勿論、俺自身に起きた不可思議な現象も重なって今まで当たり前のようにあったごく普通の日常というものを失くしてしまった。 「邦幸くん、これから一緒に住むことになるのだからわたしの言うルールは守ること。分かった?」 「……」 「あ、そっか。声、出ないんだっけ。えーっと……これ使って」 そう言って差し出されたのはA4サイズのホワイトボード。 (……やっぱり聞こえない) 俺は叔母の話を訊きながら別のことを考えていた。 入院中に体験した人の気持ちが解ってしまう現象。これからああいうことが日常的に起こるのかと思ったら最初こそ面白いと思っていたがそれは大きな間違いだと早々に気が付いた。 その能力は俺に付き添ってくれていた警察官の見たくも知りたくもない面を赤裸々に晒したからだ。 アノクソジョウシ ムノウノクセニ ムリナンダイヲオシツケルンジャネェヨ ハァ…… シゴトヤメタイ ゼンゼンラクジャナイシ オカネモタマライシ (そういうの、知りたくなかった) 俺にとっては優しい警察官の彼女も心の中では悪意とか欲望に満ちていることが分かってしまって居たたまれなくなった。
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