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叔母に引き取られてからも両親の事件の真相が俺に教えられることはなかった。
ただ単に『お父さんとお母さんは不幸なことがあって君の前からいなくなってしまった』なんて稚拙なニュアンスで誤魔化されていた。
小さかった俺はそんな誤魔化しに納得するふりをしていたが、成長するにしたがって母の発した最後の言葉や叔母の本音を知ることにより事件の全貌を理解することになる。
叔母と一緒に住むことになった頃には聞こえなかった叔母の心の声。
それに安堵していた俺は叔母の俺に対する当たり障りのない態度に徐々に普通の生活を取り戻しつつあった。
三十代半ばで独身だった叔母はバリバリのキャリアウーマンだった。忙しい仕事のため在宅している時間が少なく、お互いが接する時間も少なかったのが幸いして同居生活はさほど苦痛なものではなかった。
叔母が同居当初に決めた生活ルールを守りさえすれば俺は自由だった。
そんな環境で出なかった声が次第に出る様になり、それに比例するかのように学校生活にも馴染んで行った。
──しかしその安穏な生活が俺を再び悪夢へと引きずり込んで行った
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