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再び始まった悪夢──それは俺を容易く仄暗い奈落の底へと引きずり込んだ。
「叔母さん、こんな処で寝ていたら風邪ひく」
「……う……ん」
「……」
徹夜明けで帰宅していた叔母がリビングのソファで寝ていた。気が付けば叔母はもう四十代になっていた。
(……疲れ切ってんな)
正直いくら兄の子だとしても独身女性が子どもを育てるのは簡単ではないだろう。少々厳しいところがある叔母だったが衣食住に困らずここまで育ててくれた恩は充分に感じていた。
(素っ気ない人だからあんまり気を許してこなかったけど)
幸雄とのこともあって今は何故か無性に誰かにすがりたい気持ちになってしまったのか──
クソッ ナンデワタシガ コンナメニ
(…!)
ニイサンガ モテルノシッテイ テソレデモッテ ケッコン シタンダロウガ
(なんだ、これ)
また始まったと、そう思いながらもこの声の主はどう考えても寝ているはずの叔母から聞こえていた。
何故そんなことが起きるのか分からなかったが、今まで一度たりとも叔母から聞こえたことのない心の声が今になって聞こえるのはどうしてなのかと狼狽えた。
狼狽える俺を余所に容赦なく叔母の心の声が頭の中に流れ込んで来た。
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