flavorsour 第一章

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壁に掛かった時計の針が18時を指していた。それと同時に鳴り響く終業を知らせるチャイム。 「伊志嶺さん、準備出来てる?」 「あ、はい」 (相変わらず早いな) 昼間私を合コンに誘って来た人物──笹本奈美恵(ささもとなみえ)が予告した通り終業時間と同時に私の元にやって来た。 彼女は他部署所属の同期だった。入社時から『いい男見つけて寿退社します』と言っているような少し不真面目な人だったけれど、仕事はそれなりにこなしているので私にとっては特に害のない人と位置付けられている。 彼女はいつも終業時間と共にデスクから立ち上がる。部署違いでも同じフロアに席があるのでいつもそれを目にしている。 それはつまり、終業時間の数分前には作業を終え後片付けが終わるのが18時きっかりだということだ。 彼女が今までに残業をしているところを見たことがない。基本残業のない会社ではあるけれど、それでも全くないという訳ではない。 もっともそれは私の所属する部署はそうだということであって彼女の部署はどうなのかは知らないけれど。 なんて考えている間にも笹本さんは私を連れてロビーにまでやって来た。 「奈美恵」 「やっほー待たせたね。じゃあ行こうか」 「あれ、今日は伊志嶺さんも来るの?」 「そうそう。あたしがどうしてもって誘ったの」 「そうなんだ」 ロビーにいたのは笹本さんと一緒にいるところをよく見かける人だった。 (確か……営業の川合さん、だっけ?) あまり接点のない人だったのでうろ覚えだったが。
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