flavorsour 第二章

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もう何人目になるのか数えることにも厭いた目の前の彼女。彼女は俺の理想の女性だった。──ほんの昨夜までは。 美咲は出会った時から謙虚な性格で大人しいイメージだった。顔は上の下って感じだがスタイルはよかった。 少し甘い言葉を吐けばどんな女性もすぐに俺の欲望に応えてくれた。美咲もそういったパターンに引っかかった女性だ。 そういう感じで先に体の関係があり、いつの間にか彼氏彼女というものになった。 (……まだ、聞こえない) これまでの経験ですっかり段階を踏んで付き合う心得を身に着けていた俺。 大人しく従順だった美咲は俺に対して徐々にあからさまな催促をし始めた。最初は小さなことから。 『友だちからお洒落なカフェ紹介されて一緒に行きたいなって』 『このホテルの部屋から見える景色が綺麗でしょう? 一緒に行けたらいいなって……勿論泊りで』 『みんな持っているの、このブランドの財布。いいなぁ……欲しいなぁ』 カフェの時点では会計の時、財布を出す仕草を見せた美咲。 『気にしなくていいよ。彼女にお金出させるわけにはいかないでしょ』なんて俺が言ってからというもの、それから彼女は一切財布を取り出す仕草を見せなくなった。 そんなことは元カノたちの行動で予想出来ていた。だからこそ何も思わずにただ黙って彼女を観察し続けた。
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