flavorsour 第二章

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「じゃあ榛名くん、宜しく頼むよ」 「分かりました」 新卒入社してから二年目になったある日、俺はひとりの新入社員の指導係に任命された。 (うわぁ……厳つい) 彼を見た第一印象がそれだった。 「……伊志嶺蓮です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」 「は、あ、はい。こちらこそよろしくね」 強面な外見とは違い意外なほどに丁寧な口調、折り目正しいお辞儀に一瞬呆気に取られてしまった。 (面白い人材が入ったものだ) 彼に対する第二印象がそれだった。 初めて出来た後輩がデカくて見た目怖い奴で俺、大丈夫だろうか? と若干の心配もあったが、接すれば接するほどに彼は外見と中身が全く違うということを知った。 地頭がいいのか、こちらが言ったことをすぐに理解し応用まで利かせる。基本口下手の無口だが発する言葉はとても丁寧で不快感を覚えたことがなかった。 勤務態度も真面目で後輩としては満点をつけたいほどに完璧だった。 しかし如何せん彼はその見た目で損をしている。彼を連れて取引先に出向くと大抵相手方は顔を引きつらせた。 そしてそのフォローのために俺は慣れないおチャラけたキャラを演じることになった。
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