flavorsour 第二章

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「すみません、こんな顔ですが仕事はデキる男ですので。どうぞよろしくお願いします」 「まぁまぁそう怖がらないでください。中身は案外軽くていい奴なんで」 「怖くないですよ。とても優秀な我が社の戦力です!」 相手によって臨機応変に言葉を変え、彼のいいところをアピールしていった。 (はぁ……もっと俺に語彙力があれば) 見た目厳つい男をいい様にヨイショするボキャブラリーが圧倒的に少ないと頭を抱えることもあった。 「榛名さん、すみません」 「え」 「俺のせいで無理、していますよね」 「……」 確かに無理しているし苦労している。だけどそんな風にしおらしく謝られたら何故か居た堪れなくなる。 実際彼は仕事が出来るし気持ちの優しい人格者だ。それが分かるから俺も無理をしようと思ってしまう。 「別に無理なんてしていないよ」 「──え」 「君はそんなこと気にしなくてもいいから少しは俺を見習ってダジャレのひとつでも言えるようになりなさい」 「ダジャレ……」 「あ、今の冗談だから」 「……」 (いかん、なんか思い詰めた顔つきになった) 彼には冗談が通じる時とそうでない時の見極めが難しい。 (なんか今、必死に考えてんだろうなぁ……ダジャレを) そんなことを思っているのだろうと分かってしまえるほどにいつの間にか彼の細かな表情が読めるまでになっていた。
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