flavorsour 第二章

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伊志嶺蓮は本当にいい男だった。彼と一緒にいる時の俺はとても気楽な気持ちでいられた。 俺の努力の甲斐もあって彼はひとりでも取引先に向かって商談をまとめて来ることが多くなった。指導係としてこれは喜ばしいことでもあった。 (伊志嶺くんがひとりでも動けるようになれば俺の負担も減る) それは正直な気持ちだった。ただそれは単に彼を見た目だけで判断して間違った感情を持ってしまうだろう相手に対して感じる負担であって彼自身に対しては何の不満も嫌悪もなかった。 ──だからこそ余計気を使った 彼と仕事関係以外での交流を持つことを避けた。本当なら飲みに誘いプライベートなことも色々訊いてみたい人物だ。だけどそんなことをしたら── (彼に関心を持ってはダメだ) 彼の心が、本音が聞こえないから俺は彼を人として好きでいられる。もし万が一、俺が彼に深入りして全てを知ってしまったら…… (壊される) ここまで築き上げて来た伊志嶺蓮という人格者のイメージが壊されると思った。彼の本当の心の内を知りたいと思いつつも知りたくないと。 そんな葛藤を繰り返す日々の中、俺はとうとう知ってしまった。 ──俺の知らなかった正真正銘の本当の伊志嶺蓮という男のことを
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