flavorsour 第一章

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「伊志嶺さん、わたし営業の川合愛子(かわいあいこ)です。知らないと思っているから自己紹介。わたしの方は一方的に伊志嶺さんのことを知っているんだけどね」 「そうなんですね、よろしくお願いします」 「こちらこそ! よろしくです」 先回りして自己紹介をした川合さんは気さくな笑顔を見せてくれた。 (流石営業) なんてことを思ってしまうほどにあっという間にその場は和気あいあいとした雰囲気になった。 「伊志嶺さんみたいな美人に来てもらうと場が盛り上がっていいね」 「そうでしょう? でも伊志嶺さんに変な男が寄らないように注意だよ」 「だね。伊志嶺さんの彼氏さんに申し訳ないしね」 (……え?) 私のことで盛り上がっている笹本さんと川合さんの会話で引っかかる言葉が出た。 (『彼氏さんに申し訳ない』って) 私は彼氏がいるということを公言したことがない。というかそもそも彼氏なんてここ数年いたことがない。 でも笹本さんたちの会話から推察するに、どうやら私には彼氏が認定をされているようだった。 (見た目でそう思われたのかな) 面と向かってそういった話をしたことも訊かれたこともなく、此方から言うことでもないから気に留めたことはなかったけれど──…… (……まぁいいか) この場では彼氏がいると思ってくれていた方が楽かと思い、そのまま話を受け流した。
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