flavorsour 第二章

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そんなことがきっかけで伊志嶺くんの心の声が聞こえる様になってから彼が抱く俺のイメージも盛大に知ってしまうこととなった。 聞こえ始めの頃は俺に対する警戒心が窺え、俺の見た目のチャラさが彼の中では印象好く映っていなかったようだ。 (まぁ、そうだろうね) そこは落胆するべき点ではなく、素直に物の捉え方をしているなと思う程度だった。実際俺は本当の俺を隠して表面上だけの明るい男を演じていたから。 どんな交流においても広く浅くをモットーに俺の中に深く踏み込ませないように見えない壁を常に作り続けた。 それが俺にとってはこの世の中を上手く生きて行くための必須手段だったからだ。 他人に必要以上の関心を持たない。持ってしまったが最後、俺はまた友だちや彼女といった肩書を持つ他人を失うことになる。 深く交流するのを避けている割にはボッチになるのが怖い厄介な性格。そんな俺がひとりきりにならずに、且つ楽に息が出来る環境にいるために編み出したチャラ男設定なのだ。 (時々そんな自分が嫌になるけれど) どうしてこんな呪われた体質になったのかは未だに謎だったが、そんな中で巡り合った伊志嶺蓮という男によって俺はほんの少しだけ明るい場所を見つけた気がした。
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