flavorsour 第二章

30/51
前へ
/402ページ
次へ
ハルナサン イイヒトダナ (よせやい、伊志嶺くん) ミタメデ ゴカイサレルトイウテンデハ オレト ニテイルノカモシレナイ (そうかもしれないね) コンナニイイヒトナノニ ドウシテ カノジョガ イナイノダロウ (……) 彼の心の中はどこまでも清廉だった。声に出す言葉と同様、全く嘘や違いがなかった。 頭の中に流れ込んで来る彼の本音はそのまま口から出る言葉そのものだったからとても心地が良かった。 (あー……本当いい男だな、伊志嶺くん) いつの間にか俺にとって彼の傍は居心地のいい場所になっていた。彼と一緒にいたら余計な雑念で苛立つことも嫌悪を抱くこともないのかもしれないと思った。 ──しかし (うーん……伊志嶺くんが女だったらなぁ) きっと伊志嶺くんが女性なら俺はずっと一緒にいられると思うようになった。一緒にいて楽だなんて思う人間は後にも先にも彼しかいないだろう。 (でも実際、伊志嶺くんは男だし既婚者だ) いくら気に入っても俺は同性愛者にはなれないし、不倫もしたくない。 (はぁ……中々上手くいかないものだな) ようやく巡り合えただろう俺にとっての救い主は、決して手に入らない設定キャラだった。 ──そんな憔悴気味の俺にこの後、更なる奇跡のような出来事が起こるだなんて…… 一時はこの世に神様なんかいないと拗ねていた俺はその考えを改め、神様にありがとうございます! なんて感謝する日が訪れるのだった。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1804人が本棚に入れています
本棚に追加