flavorsour 第二章

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彼女と共に受付業務をこなして行く内にある程度彼女の事情というものを把握してしまった。 (つまり君は伊志嶺くんのために巨大な猫を被り続けている……と) どうやら彼女は完璧な見た目を維持し続けるために相当努力をしているらしい。しかし本当の彼女というのはそのまま地を表に出しても決して嫌味な女性というわけではない。──というか (寧ろめちゃくそ面白いんですが!) 見た目の美しさとまるでお笑い芸人並みの本音の面白さに俺はすっかり惹かれてしまっていた。 (この子、本当は男前なんだな) 親戚連中との表面上のやり取りを彼女の本音と交えて見ているとそうなのだとありありと分かった。 (……だけど) 彼女が見せるその完璧な笑顔が愛想笑いという名の偽物だと知った俺はついポロッと零してしまった。 「顔、筋肉痛になったことある?」 「……は?」 (いや、だって作り笑顔って疲れないか?) 「君って本当に笑ったらどんな顔になるの?」 「…!」 (本当の、正真正銘の笑顔は作り笑顔とは違うのかな) そんなことを思いながら発した言葉に対して彼女の心の声が── ナニヲイッテイルノ コノヒト と、至極当たり前の言葉だったことに微かに安堵した。
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