flavorsour 第一章

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笹本さんと川合さんに連れられてやって来た合コン会場は雰囲気のいい小綺麗な居酒屋だった。店内に入って案内されたのはいくつかある個室のうちの一室。 笹本さんが率先して個室のドアを「失礼しまーす」と言いながら開けると中にいた男性たちから「待ってました!」なんて聞こえた。 笹本さんに次いで川合さん、そして私が一番最後に入室した。 部屋の中央に奥に向かって伸びる長いテーブルがあってそれに沿って両脇にベンチ式の長い椅子が設置されていた。 片方に男性三名が座って私たちを迎えた。奥から笹本さん、川合さん、私の順で座ると私の向かい側に座っていた男性と目が合った。 (……え) 一瞬思考が止まった。そのまま呆けているとその男性も私に気が付き「あ」なんて小さく吐き出していた。 「え、何何? そちら、彼女と知り合い?」 私たちの様子に目敏く気が付いた川合さんがすかさず訊いて来た。 (嘘でしょう?! どうしてこんな処で!) 川合さんの言葉に内心焦りまくっていた。だって私の前にいたのは蓮の結婚式で一緒に受付をやった蓮の会社の先輩社員、榛名さんだったから。 (何で会っちゃうのよ! こんな場所で、こんなシチュエーションで!) 偶然とはいえとても性質(たち)の悪い冗談としか思えない。
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