flavorsour 第二章

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よほど真剣な考え事をしていたのか、彼女は俺が隣に座ってもすぐには気が付かなかった。 (何をそんなに真剣に) そう思った瞬間、彼女の心の声が脳内を直撃した。 イクジナシ! (おっと) 荒々しい言葉に一瞬怯んだ。しかしよくよく聞いてみると彼女の理想の男性像、元カレの存在、見合いした男が妹の夫になったことなどその言葉に繋がる経緯を実に赤裸々に語ってくれた。 (ふぅん……お父さんや伊志嶺くんが理想……ね) 彼女の理想とする男性が強面の見かけで心根の優しい男だと知って少し意気消沈している自身がいた。つまり俺とは真逆の男。 (俺、見かけだけの男だもんなぁ) こんな変な能力があるし凄惨な過去を持った痛い男。どんなにあがいても伊志嶺くんのような清廉潔白で一途な純情男にはなれない。 ある意味俺はコンプレックスの塊だった。 こんな汚い男に彼女は勿体ない──そう思いつつもまるで彼女に救いを求めるかのように手に入れたくて仕方がない。 (俺のものになってよ) 彼女にとって全く理想の男ではないと分かっていてもそう強く望んでしまう。
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