flavorsour 第二章

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彼女の頭の中では俺は伊志嶺くんのことが好きで、隙あらば嫁さんから略奪しようと目論んでいるらしい。 そのために妹である自分に取り入ろうと近づいて来た男──という認識になっていた。 (おいおいおい) えらくツッコミどころ満載の妄想に思わず笑いが込み上がりそのまま吹き出してしまった。 (面白れー。何この子、本当面白いんですけど!) 一度堰を切った笑いは中々止まらない。そんな俺を見ている彼女の顔は段々怪訝さを増す。 (あ、拙い) このままでは俺はただの変な人になってしまう。同性愛者の烙印を押された上に変人の肩書までついてしまうのは本意ではない。なんとか誤魔化さなくてはと一旦頭を冷やした。 幸いにも彼女は俺の誤魔化しの言葉にまんまとハマり、俺のことよりも自分のことで頭がいっぱいになってくれた。 (はぁ……よかった) しかし脳内での多少の乱れ振りはあったが流石才女というべきか。彼女は割とすぐに持ち前の凛とした心根を持ち直した。 そんな雰囲気を察した俺も彼女につられて顔を引き締めたのだった。
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