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月曜日に研修が始まって、今日はもう金曜日。
札幌ブロックの黒沢希望は、講義中に斜め前に座る東京ブロックの梶木蒼汰をこっそり見つめるのが日課になりつつあった。
「のんちゃん、見過ぎだってば。」
希望の横に立つ人の気配。
見上げると、同じ札幌ブロックの伊藤香菜と田崎美乃梨が立っていた。
「あ、あれ。もう終わったんだ。」
どこか別の世界にトリップしていた希望が慌てて言うと、
「集中するとこ違うからっ!」と香菜のツッコミが落ちた。
「そんなに似てる?」訝しげに言う香菜に「まぁ、分からなくもないよ。」と笑いながら答える美乃梨。
「絶対似てるよ!だって、初めて見た時に蒼汰くんが来てるのかと思ったもん!名前の漢字も同じだし!」
目をキラキラと輝かせて力説する希望に笑いながら、香菜が荷物を片付けるよう促した。今日の講義は全て終わっている。既に身支度を終えている二人を見て、希望も慌てて荷物をバッグに入れて立ち上がった。
教室が並ぶ廊下を会話しながら歩き、各自の部屋に到着した。ピッとカードキーが解錠する音が聞こえて、希望は自分の部屋に入った。
研修中はスーツ着用の指示があるため、ジャケットにスカートにパンプス姿で受講している。スーツを脱いで、私服に着替えた。パーカーにジーンズにショルダーバッグ。スニーカーを履いてラフな出で立ちに変わり、気が楽になった。
最後の講義が終わると空腹になるのか、17時という早めの食事時間にもかかわらず皆すぐに食堂へ向かう。
メニューは固定の定食メニューで、とにかく量が多い。ご飯もお味噌汁もお代わり自由で割と好評だった。
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