心ないひとこと。

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 「黒沢希望って知ってる?」  「俺は知らん。お前は?」  良かった!  希望はホッとした。まだ始まって一週間だし、全員の名前なんて覚えてないよね。北川さんみたいに目を引く美人じゃないし、話題は他の人に移りそう。っていうか、早く終わってほしい。  残念ながら、希望の目論見は外れた。  「俺も知らねぇわ。あ、黒沢ってことは蒼汰、席近いし知ってんじゃね?」  うそ、蒼汰くんも居るの⁉︎  希望の心拍数が急に上がった。通り過ぎて部屋に向かうつもりだった香菜もさすがに足を止めた。  「黒沢希望?…ああ、席近いわ。斜め後ろにいたような。」  少し高めのその声は、確かに聞き覚えがある。  蒼汰くんに存在を認識してもらえてる?嬉しい!明日話しかけてみよ…  その後の言葉に、希望の思考はプツリと停止した。  「あのニキビの奴な。休み時間の度に化粧直ししてるのか、ファンデーション分厚いよな。あれはヤバイだろ。」  それは、紛れもなく梶木蒼汰の口から出た言葉だった。  
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