129人が本棚に入れています
本棚に追加
「…え?」
「それ。なんか駄目になったんでしょ?」
それ、と言って、彼女は佳亮が持っているバッグを指差した。
「あ、ああ…。卵が…」
聞かれるままに答えると、彼女は、そう、と言って、手に持っていたらしいキーホルダーをちゃり、と鳴らした。
「コンビニまで連れていくわ。私の所為かもしれないし」
「へ?」
彼女の言葉に佳亮がぽかんとすると、だって、と彼女は申し訳なさそうに言った。
「だって、私と目が合ったから、鞄落としたちゃったんでしょ? 何か申し訳ないから」
言われて、先刻の状況を認識してしまい、佳亮はぱあっと顔に熱が広がるのを感じた。そうだ、先刻のは、佳亮が彼女のことを見ていて、それでこの人と目が合ってしまったということなんだった。
「あ…っ、いや、すみませんっ。ちょ、ちょおぼんやりしてただけで…」
「うん…。まあそうかもしれないけど、驚かせたのかなって思って。だから気にしないで。もうスーパー閉まってるし、コンビニで良いでしょ?」
ちゃりちゃりっと小さな金属音をさせて、彼女がキーホルダーを振る。そして指差した方向は、マンションの前に設けられた駐車スペース。…あの車に乗るってことなのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!