再会

4/5
前へ
/149ページ
次へ
「…え?」 「それ。なんか駄目になったんでしょ?」 それ、と言って、彼女は佳亮が持っているバッグを指差した。 「あ、ああ…。卵が…」 聞かれるままに答えると、彼女は、そう、と言って、手に持っていたらしいキーホルダーをちゃり、と鳴らした。 「コンビニまで連れていくわ。私の所為かもしれないし」 「へ?」 彼女の言葉に佳亮がぽかんとすると、だって、と彼女は申し訳なさそうに言った。 「だって、私と目が合ったから、鞄落としたちゃったんでしょ? 何か申し訳ないから」 言われて、先刻の状況を認識してしまい、佳亮はぱあっと顔に熱が広がるのを感じた。そうだ、先刻のは、佳亮が彼女のことを見ていて、それでこの人と目が合ってしまったということなんだった。 「あ…っ、いや、すみませんっ。ちょ、ちょおぼんやりしてただけで…」 「うん…。まあそうかもしれないけど、驚かせたのかなって思って。だから気にしないで。もうスーパー閉まってるし、コンビニで良いでしょ?」 ちゃりちゃりっと小さな金属音をさせて、彼女がキーホルダーを振る。そして指差した方向は、マンションの前に設けられた駐車スペース。…あの車に乗るってことなのだろうか?
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加