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予期せぬ展開
暗い道を、駅の方向へと戻る。隣を歩く彼女は、先刻からキーホルダーをちゃりちゃり鳴らしていた。
「うちのマンションの人だったかな? 私、自分の階の人とかも知らないから、貴方のことも知らなかったけど…」
「あ…っ、いや、僕は道路挟んで向かいのマンションで…」
彼女の問いに、しどろもどろと答える。最初から不審者だと思われていなかっただけ良かったのだろうか。
「向かい? うちのマンションじゃないの? じゃあなんでうちのマンション見てたの?」
「あー…、いや、その…」
まさか、貴女がベランダにいたのを見つけたので、見てしまいました、とは言えなかった。言葉を濁した佳亮のことをどう思ったのか、彼女はじっと佳亮を見つめて、それから、ああ、とにこりと笑った。…夜の街灯に照らし出される笑みは、僅かな明かりなのにそのきれいな顔を夜の闇に浮かび上がらせていた。
「誰か気になる人でもうちのマンションに居た? でも、女の人は、あんまり夜は窓にも近寄らんじゃないかな」
私は気にしないけど。そう言って彼女が明朗に笑う。
「や、違いますって!」
「じゃあ、なんであんな風に見てたの?」
あんな風に、と言うってことは、少なくともぼんやりと見つめてしまっていたことは認識されてしまっていると言うことだった。…恥ずかしくて顔から火が出そうだった。全く暗闇でよかった。
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