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春、それは新しい出会い。
初々しい新入生の獣人たちが友達作りをしているなか暗青灰色の髪色をしたオオタカ族の獣人であるヨンソは獲物を見定める鋭い目で学生たち全体を眺めて
「楽しい学校生活になりそうだな、ボルム?」
お目つけ役として一緒に入学した同族であるボルムの隣に立って中学生らしからぬシニカルな笑みをうかべているヨンソは成人した獣人の雄の体格をもっているのでそんな表情が似合ってしまうのだった。
体格のせいか猛禽の獣人だからか、同級生たちはチラチラとヨンソとボルムを見てくるものの話しかけてくることは無く、もとから友達作りなどに興味がないヨンソはまるで気にしていないのであった。
この学校は敷地内に中学と高校が併設してある一貫校で、寮が完備していることもあり近隣や遠方からくる学生も受け入れをしているお金さえ払えばバカでも入れる獣人学校として有名である。
「くれぐれも軽率な行動はお控えください。ヨンソ様」
とボルムが言っているのを聞き流して、静かな階段を3階まで進んで男子トイレに迷いなく歩いていくのを訝しげな顔をしながらも後ろからついてきている。
通りすぎた教室に残っている生徒もなく静かな空教室ばかりである。
ヨンソは足音をたてずにトイレの入り口まで来ると制服のズボンから携帯を取り出すしカメラ機能にすると
カシャっ!カシャっ!カシャっ!カシャっ!…
と派手な音をたてながら連写機能でトイレを撮影……ではなく中にいた生徒たちが被写体である。
「センパーイ、新入生をこんな場所につれこんで何してんの?」
そこにいたのは上級生のライオンの獣人が3人とその足元に黒豹の獣人がぐったりとしているのだった。
「どんな理由があれば上級生が新入生をボコっていいんですかねぇ?」
とヨンソが携帯を顔の前で振りながら挑発するようなふてぶてしい態度でその場にいた上級生のライオンの獣人たちに話しかければ
「この黒豹の獣人ちゃんが俺たちと遊びたいっていうから遊んでたんだよ?」
「黒豹ちゃんのオ友達~? キミ達も僕らと遊びたい?」
「どうしてこの場所が分かったのかお兄さん達に教えて?」
とゲラゲラと品のない笑いをして勝手なことを言いいながら上級生たちはトイレの入り口へと歩いてくる
ヨンソとボルムに見られようが証拠を撮らていようが3人は慌てもしないのは中学生ごときに負けるわけがないう自信からか学校が問題にしないこと知ってのことか
まぁ、ヨンソと違い中学生らしい体格のボルムは戦力外だし期待もしてないので手をヒラヒラと振って、トイレの外を見張るように合図して追い出した。
「あれあれ~?お友達は逃げちゃったけど?」とバカっぽい口調で言い、他の2人もニヤニヤしながらヨンソとの距離を縮める。
上級生に怯まないヨンソは彼らよりも先に動き、右にいた獣人のみぞおちに拳を強打して倒し、ヨンソの動きに驚いている左の獣人の後ろに回りこみ首に腕を絡めて頸動脈を圧迫して絞め落とすまで1分とかからずやってのけ
「先輩、俺と遊んでくれるんでしょ?楽しませてくださいよ。」
とヨンソは首を傾けて険しい表情に変わった上級生に不適に笑ったのだった。
ボルムは男子トイレ近くの壁に寄りかかり携帯で時間を確認すればヨンソをトイレに残してから5分くらいが過ぎている。
ヨンソよりも上級生の安否を気にしだしたころ
「帰ろうぜ、ボルム。」
と言う声が後ろから聞こえてボルムはヨンソと入れ替わるようにトイレの中をみれば床に転がる上級生3人と黒豹の獣人がヨロヨロと立ち上がるのを確認してヨンソを追いかけて並んで歩き
「お戯れは程々に。」と呆れた声を出すのであった。
どんな理由があれば入学1日目にして下級生が上級生をボコってもいいのか……
ヨンソと一緒にいるかぎり気にしてはいけないのだ。
善意で黒豹の獣人を助けたのでは無く、正義感ですら無く
ヨンソが上級生をぶちのめしたかったから、とりあえず殴っておいた♪ぐらいの軽い気持ちなのだろう。
喧嘩慣れした上級生のライオンの獣人たちならヨンソの遊び相手として丁度いいかと思ったのに3人がかりで相手にならないとは油断のしすぎである。
この学校なら遊び相手に困らなくてすみそうだ
上級生たちが中学生に喧嘩で負けたなどと言いふらすバカはいないだろうしヨンソの悪い噂が流れる心配をしなくていい。
親族に無理やり入れられた学校ではあるけれどヨンソの悪癖である雄としてのプライドをへし折りたいという歪んだ欲望も上級生たちが満たしてくれるだろう。
金さえ払らえばどんな生徒でも入れる学校だけあって
無秩序で無法地帯。
ヨンソの遊び場として適した場所は他にはない。
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