03 何かが可笑しい

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03 何かが可笑しい

飼ってるペットが目を覚ましたら、人間の男性でしたなんて非現実な事は有るはずないし 夢でしょ、なんて安心してたのはほんのつい最近の出来事 年齢イコール彼氏いない歴の私が、余りにも寂しくてそんな夢を見た、ってのなら納得できる 欲求不満なのは認めてるから、年下のイケメン男子に抱かれたら、そりゃいいだろうね その夢は、余りにも良かったのかまた見てる 『 っ……重い…… 』 夢の中で目が覚める、それは不思議な感覚だけど 生々しい程の重さに気付き 意識を浮上させ、背中に感じる温もりと共に聞こえてくる寝息は猫にしては大きいし、なんといっても視線を下げれば黒髪が見える さほど大きくもない胸元に頬を当ててぐっすり寝てる十八歳前後の少年 腹を蹴り飛ばすことは今回はしないが、その変わりに頭上にある猫耳へと触れ、ぎゅっと握り締める 「 ぎゃっ!!っ……っ~~!!ママ、なに!? 」 痛みと共に起き上がり、顔を上げた男を軽く睨む もし、本物の飼ってる猫なら動物虐待になるが、現在は自分より大きな異性であり 本物の猫耳なのかと確認しただけ 痛覚がある事にちゃんとくっついてるのだと理解した 金色の目は涙目になってるのを見ると痛かったのだろ、耳に片手で触れてる様子を見ては告げる 『 重い、どいて…… 』 「 んー……わかった…… 」 渋々横へと退いた少年は全裸 起きたら裸になってることは見慣れないといちいち叫んでたり、騒いでたらキリがない なんせ、この夢を見るのはもう数回目だ 今回もまた寝起きから始まる感覚に、後何度この夢を見るのか疑問に思う 仕事に行くわけでも無いために、十時頃に起きて背伸びをしてからベットから下り 朝御飯の準備をする 『 服着たら着いてきて、もう…着替えかたぐらい分かるよね? 』 「 モゴモゴする…。けど……着る…… 」 『 よし、いい子 』 普段は人と同じ耳なのに、今朝は猫耳が変わりについてる 何故?その疑問は余り分からないが、背中に揺れる黒い尻尾を見れば、猫耳とセットに現れたよう まぁ、夢なら急に萌え要素が現れてもいいかなって思うが相手は未成年っぽいとは言えど少年 余り可愛くない 出来れば可愛いメイド服を着た女の子に着けて欲しい猫耳と尻尾だ 嫌々に服を着る少年を放置し、寝室からリビングへと行く 二階建てなのに、二階は殆ど客室やらパソコンルームだったり、使わない段ボールを押し込んでる物置 その為に、一階ばかり使っている 少年が人の姿の時は、先に他のペットの餌やりと掃除を終わらせる やっと着替えた少年は落ち込んでるように元気さが無くなり、朝御飯の準備をしてた私の背中から抱き着いてくる 「 ママ……服きらい…… 」 『 人の姿なら着ていて 』 「 なんで、この姿になるのか、分からない…。起きたら、こうなってる…… 」 よっぽど服が嫌いなのだろ、無理はないがいちいち抱き着かれてたら料理がし辛い まぁ、簡単に目玉焼きと食パンしか焼いてないのだけど…… 『 そう、ほら出来た 』 人の姿でキャットフードなんて与え辛くて、仕方無く朝御飯を準備することにしてからは、まともに二食は食べさせている こんな、人の世話をするタイプじゃ無かったのにって思いながら半熟に焼いた目玉焼きを皿へと乗せる 「 これ、好き。美味しい 」 早く欲しいとばかりに、離れて、慣れたように引き出しを開けフォークを手に取り、キッチンからダイニングテーブルへと座り直した少年の前に、味付けをしてない目玉焼きの乗った皿と食パンを置く 『 どうぞ、食べたら皿を片付けてね 』 「 はーい! 」 自分は一食しか食べないために、食べる様子を見てから目の前の椅子に座り膝の上にノートパソコンを置き、ネット通販へと視線をやる 飼ってるペットと同じ、ルツと名乗る少年の為に弟の服ではない下着やら服を選ぶ まぁ、この少年以外にももう一人居候が増えたのだが…… 「 ルイ、どうしたら…… 」 『 ん?ピーちゃん……なにしてるの…… 』 ふっと聞こえてきた声に顔を上げれば、そこには服を間違えて着てる明るい緑色の髪をした青年がいる ピーちゃん、というのはウロコインコの名前なのだけど彼もまた人の姿になれるらしい 平然と挨拶したときは驚いたけど、今はもう慣れた ルツより人になる回数が少ないために、いまだに服を間違えて着ている 「 ヘタクソー!そでを通すんだよ 」 「 そでって、なんです? 」 『 はぁ…… 』 男性の世話なんて、そう溜め息を吐きパソコンを閉じてから近付く どこから手を通したのか分からないほどの着方に、一旦服を脱がせる ルツより細身で筋肉のない身体をしてるが、しっかりとした男性なんだよね…… 『 はい、ばんざいして 』 「 こうですか…… 」 『 そそ 』 両手を挙げさせ、簡単に着れる大きめのシャツをもう一度着せれば、彼は頭を出した後に笑みを溢す 「 ありがとう、ルイ 」 『 いいよ。ピーちゃんには羽織れるようなパーカー向きかな 』 ファスナー系が良さそうだと思い、服を着せれば彼は椅子に近付き、器用に椅子の上で膝を抱えて座るというか乗る 最初は注意したけど、インコの彼にはこれが一番安心するらしく、もう放置することにした 「 たまご…… 」 「 目玉焼き、おいしいよ? 」 『 鶏のタマゴだから! 』 ピーちゃんはタマゴを見るとちょっと眉を下げる様子に、やっぱり何か分かるんだろうね そりゃ一度はお嫁さんが無精卵でも産んでたのを見ると覚えてるか インコじゃないとフォローすれば、彼は私の方を向く ほぼ真横に向く顔に、怖いなって思うけど慣れなければ……相手は本来なら柔軟な鳥だからね 「 大丈夫です、ちょっと美味しそうに見えるので 」 『 あ、そっか……鳥って砕いた牡蠣殻とか食べるもんね 』 「 産まないので、そんな必要ないですが…… 」 ピーちゃんのご飯のために、ネット注文して買ったミカンを持ってきて、手元に置けば彼はそれを見てから片手で持ち皮を口で剥き中身だけ食べる 水分が落ちないようにちゃんと、一粒ずつ食べてるけど、剥くってことをしないんだよね 綺麗な顔をしてるのに口……まぁいいか 「 そんなことより、ママ遊ぼ!!オモチャ持ってくる! 」 言われた通りに皿を食器洗い機に置いて、部屋をかけ走りオモチャを探し始める ピーちゃんは基本的に座ったら一時、そこから動かないためにミカン食べさせて放置出来るが、問題は騒がしいルツ 遊ばないとまた噛むことを知ってるために溜め息は漏れる 「 んー……オモチャ……こっちかな…… 」 昨日どこに咥えてもって逃げたのか テーブルの下やらソファーの後ろなどを見て、猫じゃらしを探すけど、私の視線の先にはある なんせ、サイドテーブルの上に置いてるのだから 『 見つけたら遊んであげる 』 「 うん! 」 あぁ、あの耳と尻尾は何かに気をとられて興奮すると出るんだ 食べてるときは消えてた耳は、今は現れて頭を突っ込んで探すその背中には尾てい骨から生える尻尾がある 顔を上げて辺りを見る、頭にも猫耳がつきキョロキョロと見る様子はちょっとだけ可愛い オモチャを探してるルツをよそに、ピーちゃんは椅子に座ったまま目を閉じウトウトとし始めた 流石温厚なインコ、食べたら寝てくれるしルツが騒がしくても平気そうなのを見てると褒めたくなる 『( インコの姿ならにぎにぎ出来るのに、どこ触ったらいいかな? )』 いつもなら手の平に合わせて身体を優しく掴んで、親指とかで耳辺りを触れるのだが 今は青年の姿、触りたくても触れない…… けれどちょっとだけ反応を知りたい、好奇心が勝りそっと手を伸ばし横髪へと触れれば、少し目を開けるも彼は手へとすり寄る 『 ……ピーちゃん、どこ触られるのが好き?この辺? 』 横髪から、顎へと触れるもそこじゃないようで 顔を擦り寄せる動作を見ては、耳へと触れれば笑みを溢す 「 んっ……気持ちいい、です… 」 『 やっぱり耳辺り…… 』 耳の形にそって触り、軽く耳朶とか揉んでいればふにゃっとした表情を見せる 綺麗な外見なのに、甘えかたや大人しさは変わらないね、と微笑ましくて見ていればヤキモチ妬きの猫はやって来た 「 あ!!ルツも、ルツもなでなでしろ! 」 『 重いって…… 』 椅子に座ってた私の膝へと座ろうとする、その背中を押して嫌がればしゃがみこみ、膝の上へと両手を置き顎を乗せる 「 んー、なでてー 」 『 はいはい、オモチャは? 』 「 あきらめた! 」 笑顔で言うけど、撫でられることを優先しただけでしょ…… 頭を撫でていれば嬉しそうに喉を鳴らすルツを見ていたピーちゃんは、肩へと凭れるように頭を乗せてくる 『 待って、椅子の上は止めよう。移動!! 』 流石に堪えれない!重さに無理!!と立ち上がった私は、いつもの定位置になってきたソファーに座れば左側にピーちゃんが膝を抱えて座り、ルツは膝の上に頭を乗せる 凭れるピーちゃんと、膝を独占出来て満足気なルツを見て苦笑いは漏れ 其々の頭に触れ、優しく撫でていく 「 んー…… 」 仰向けになり見上げるルツは、目を閉じ喉を晒す 仕方無く喉元を優しく撫でればゴロゴロと響く振動が面白い 『 よく震わせれるよね…… 』 「 みやぁー 」 少年が猫の声を出すことに違和感はあるが、夢ならいいと納得する 其々に眠るのを見て、こっちまで眠くなってくる 人の姿になっても、普段と変わらないスローライフに満足すらある
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