部活で泣く。グミを添えて。

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タイトルを見て、少しでも部活動の燃えるような展開を思い浮かべた方がいたら謝りたい。僕にそんなスポーツ漫画的な経験はないのである。申し訳ない。 さて、本題に入る。僕はなんとか地元の公立高校に入学し、若干の期待と不安を胸に高校1年生となった。しかし、高校1年生というものは高校全体のヒエラルキーの内で最下層なわけで、先輩の言うことには絶対服従が基本。それは部活でも同様であった。 僕は運動部に入部した。多くの部活動がそうであると思うが、この部活には先輩の大会には後輩が同行するという決まりがあった。そして僕らは先輩の試合を応援し、サポートするのだ。こんなのはまだいい。会場に着くまで遠足気分で楽しい。ただ、僕を含め、1年生を憂鬱にする大仕事があった。それは、審判である。審判といっても線審という、試合で使用する球がラインの外か内か等を判断する審判である。な〜んだそれだけか、と思った人にはあの時の緊張感をぜひプレゼントさせて頂きたい。先輩達の試合の勝敗に関わる線審…。ミスったら…やべえ。逆に、これをまだ入部して間もない、いたいけな1年生にやらせるのだ。なんとも恐ろしい部活である。 大会の会場で、線審なんてやりたくねえ…そう思っていた僕に見事に白羽の矢がたった。先輩の言うことには絶対服従なので断ることもできない。オーマイガーである。ああ、私の神様よ…状態である。「線審してくれるから、試合終わったらジュースおごるよ!」と僕を指名した先輩は試合のコートへ向かっていく。そんなジュースなんてもらったところで…と暗い顔でとぼとぼと先輩の後ろについていく。 線審の位置につき、試合が始まる。始まってしまえば試合の展開など、どうでもいい。ただ自分の仕事をミスらないように行うのだ。…ここで盛大にフラグが立っているが、その通りである。僕はミスる。よりによって、まあまあ勝敗に関わる場面で。しかも、僕は間違えたと自分で気づいていなかったのだ。堂々と間違えた判断のジェスチャーを出す1年坊主に顧問たちの、…え?なんで?という視線が突き刺さる。ああ、忘れられないの。サ〇ナクションの歌詞のようになってしまったが、今でも本当に忘れられないのだ。 数行に渡ってミスの話を綴ったが、実際にはほんの数秒のできごと。試合はその後も行われ、終わった。先輩は負けてしまった。「俺もミスしたことあるから気にするなよ」と言ってカルピスを渡してくれた先輩には感謝感謝である。 その先輩の試合が終わって数分後、僕はカルピス片手に泣いていた。ああ、先輩は僕のせいで負けたんだ…ごめんなさい…こんな気持ちでいっぱいになって、涙が溢れてきた。結構泣いた。会場の片隅で。そんな時、部活仲間のちょっと天然なA君が僕の元へ来て、「これ、食べる?」と何か差し出してくれた。 グミだった。青リンゴ味だったと思う。 「うん…ありがと…」と言って僕はグミを1つもらって食べた。先輩に申し訳ない気持ちでいっぱいで泣いてるくせに、なぜか差し出されたグミをなんの躊躇もなく食べている。この状況がなんだか面白くなって、すぐに泣き止んだ。 それからなんだかんだあってA君は部活を辞めた。別にいじめとかではなく、A君の意思で辞めたのだ。それでも僕はA君にもらったあのグミの味を覚えている。あのしっかりとした歯ごたえのあるグミの味を。
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