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◆◆◆
都築からの報告を受けた。
長田組のヤクの取引は中止になったこと。
警察が居たことから、当分は警戒して取引が行われないこと。
長田組の下っ端数人が逮捕されたこと。
そして、俺達にも容疑がかかっていること、だ。
「今回のことで痛くもない腹を探られるのはゴメンだな。」
「はい。長田組が潰れないことには……お頭の本来の目的も達成されません。こちらに容疑がかかったままにもなるかと。」
「そうだな。とりあえず、向こうが用意してきた会合に参加して様子を見る。」
「かしこまりました。」
長田組は俺達の界隈にまで足を伸ばし、あろうことかヤクを捌いている。
大きな後ろ楯である銀竜会がいるとあっては、組1つ潰すのも簡単な話では無かった。
──なかなか上手くいかねぇもんだな。
どの組が何をしようが、基本的に俺はどうでも良い。
ただ、麻薬だけは別だ。
あんなものがあるから…母は…。
心配そうに俺を見つめる都築に気付き、軽く肩を上げて大丈夫だと告げた。
「会合は明日の19時、赤坂です。何か動きがあったらまたお知らせ致します。」
「あぁ。分かった。」
一人になった部屋で、これからの計画を思い描く。
今回は警察に取引情報をリークしたが失敗して、こっちまで疑いがかかってしまった。
とは言え、名乗って情報提供したところで信じてもらえる可能性は低い。
ただのヤクザ同士の抗争だと思われ、両方潰そうとしてくるのがオチだ。
気は進まないが、吾妻とコンタクトを取るしか無いか…。
警視庁組織犯罪対策第5課、通称「組対5課」で頭角を現している元級友の神経質な顔が思い浮かぶ。
まどろっこしい手続きが待ちきれない性質な為、動きやすいヤクザ稼業に身を置いているというのに……力不足を感じて、無意識に拳を固く握り締めていた。
30歳になろうかというのに、俺は全く成長しねぇな。
新月の暗闇よりも昏い感情を抱きながら、瞼をゆっくり落とした。
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