ヤクザの息子

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 のぼせそうに熱いのは、お風呂の温度のせいだけではない気がした。  俺が何かを仕掛ける度に、思った以上の反応を返してくれる彼女に溺れていく。  最奥をグリグリと掻き回すように擦ると、媚肉が震え、激しく締め付けてくる快感に俺は夢中になった。 「あぁぁっ!孝一さ……も、ダメですっ……そこばっかり……んっ…」 「ココだろ?もっと擦ってやるから、何度でもイケ。」 「ふぁっ!あ、あっ、また……あぁぁあっ!」  大きく背中を仰け反らせて達した響の動きに合わせて、熱い飛沫を中へ放った。  肩で息をする響を優しく抱き締めながら、ゆっくり湯船から立ち上がる。  さすがにここで続けていると、二人でのぼせてしまいそうだ。  甘い唇を堪能するだけで堅さを取り戻してくる楔を、ズルリと引き抜いた。  脱衣場で体を拭いてやり、ガウンを着せた響をそのまま自室へ誘い、場所を布団に移して再び熱を交わし合う。  響は何度も俺の名前を呼び、その度に俺も響を呼んだ。  まるで愛を伝え合うような時間に酔いしれながら、腕の中の響を優しく、激しく、愛したのだった。 ──ん……。  窓から射す光が眩しくて、ゆっくり目を開けるとスヤスヤ眠る響が隣にいた。  少し開いた唇からチラリと覗く濡れた舌を見ると、朝から盛ってしまいそうになり苦笑いを浮かべた。  思春期のガキか、俺は。  気を紛らわせるように、艶やかな髪に手を伸ばしてそっと撫でてやる。  そのまま頬や顔を撫でていると、長い睫毛を震わせて瞼を上げた響と目があった。 「おはよう、響。」 「おはようございます。孝一さん。」  少し照れたようなはにかんだ笑顔を見せた彼女はとても可愛らしくて、思わず腕の中へ抱き寄せた。  驚いたように響は少し体を硬くしたが、すぐに力を抜いて寄り添うように背中に手を伸ばしてきた。 「昨日は、ありがとうございました。…まさか自分が薬を使われるとは思ってもみなくて…」 「体はもう何ともないのか?苦しかったり、辛かったりしたらすぐに言え。」 「………。」 「響?やはり、どこか…」 「いえ!違います!その……大丈夫です…。」 「そうか。もし何かあればすぐに言え。」 「はい。」  頭を撫でながら髪を弄っていると、響はくすぐったそうに肩をすくめた。 「あ、あの。昨日のことですが…取引は考えて返事をくれるそうで、まだどうなるか分かりません。」 「そうか。直接話した感じはどうだ?坊っちゃんはお前に取引を持ちかけてきそうか?」 「……どうでしょうか。昨日までは楽な相手だと捉えていましたが、底知れない気味悪さというか、そういう顔が見えたので…今までの観察は役に立たないような気がします。」 「あいつは生まれながらに、ヤクザの世界を見てきているからな。他の人と感覚もだいぶ違うだろう。…ただ、響のことを気に入っているのは間違いないと思うぞ。」 「……そう、ですね。」  ブルッと体を震わせた響は、俺に抱きつく力を強めた。  まるで親にすがる子供のような仕草に、不安を拭うように背中をよしよしと撫でてやる。 「まぁ、また連絡が来るだろう。それより、お前が無事で良かった。」 「……はい。連れ去られなくて本当に良かったと、思います。薬を使われたのは初めてでしたが…あんな風になるんですね……。」  沈んだ声が聞こえてきて、響の体が少し固くなった。 「怖かったか?」 「…それもありますが、それよりも……昔のことを、少し思い出して……後悔していました。」 「そう言えば、薬の話をした時知ってるって言ってたな。」 「……はい。自分の欲の為に、酷いことをしたんだと……自分が体験して、初めて実感しました。」  坊っちゃんは響を自分のものにする為に薬を使った。  ということは、響も誰かを自分のものにする為に薬を使った…?  薬で他人を思い通りにしようなど間違っている!と普段なら怒りという感情が一番にくるはずだが、今回に限っては『薬を使ってまで思い通りにしたい相手がいた』という事実に心を取られていた。  帰りたくなさそうにしていたのは、そいつとうまくいかなかったせいだろうか…。 「……そうか。」  そんなつまらない返事が出ただけで、重たい沈黙が部屋を包んでいる。  体を離した響は、布団から出た場所に正座してこちらを向き、深々と頭を下げた。 「昨夜は本当にありがとうございました。」 「あぁ…。」 「では、失礼致します。」  ふわりと笑って見せた響は、そのまま部屋を出ていった。  目の笑っていないその笑顔は哀しくて、俺の目にいつまでも焼き付いていたのだった。
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