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寝る前に呼び出された私は、都築から説明を受けた。
明日の深夜、0時。
東京から車で他県へ移動するらしく、待ち合わせ場所は大きな幹線道路に面した場所だ。
海に面した工業地帯の一画で行われるそうだが、それだけでは場所の特定がしづらい為、こちらは事前に組員を配置するのは難しい。
何人待ち構えているか分からない場所へ、のこのこ数人で行かなければならないリスクは相当だろう。
孝一さんの居ない薄暗い廊下で、都築が告げた一言が耳から離れない。
「頭が狙われる可能性がある。異変に気付いたらすぐ教えてくれ。」
そう言えば、初めて孝一さんと出会った時。
彼は脇腹から血を流して、意識を失った。
もし、今度は心臓を刺されたとしたら……。
ゾクッと背筋が震え、足元から崩れ落ちるように力が抜けてしまい、部屋の中でへたり込んだ。
ガタガタと小刻みに震える体を抱き締め蹲った。
もし、孝一さんが襲われそうになったら…私は自分を犠牲にしてでも彼を助けたい。
自分のことを大事にしろと怒られるかしら。
真剣な顔で心配してくれる孝一のことを想うだけで、体の緊張が少し和らいでくる。
もともと村を追放された時は、死んでも良いとさえ思っていた。
そんな私をなにも言わず傍におき、役割を与え、心を砕いてくれた…弱い人間だと馬鹿にしていた自分を情けなく思う。
優しく強く、そして温かい人達を。
私は守ってみせる。
暗い部屋で鬼化した私は、鋭い爪をさらに鋭さを増すように整えてから眠りについた。
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