2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「野口、パン半分食ってくれない?」
給食の時間、ほとんど毎日、隣の席の登藤 健 に言われた。
「いいよー。」
いつも私はそう答えると、登藤のパンを半分受け取り、2口でたいらげる。
「登藤さぁ、ちゃんと食べないから、背が低いんじゃない?」
登藤は、クラスで学年で1番背が低い。それでいて、気が強い。
「僕、ホントはたくさん食べるんだよ。こないだもステーキ500グラム食べきったもん。」
小学生の給食で、コッペパンを半分しか食べられないのに、ステーキ500グラムなんて食べられるはずがない。
登藤は、負けず嫌い。それが如実に現れるのは体育の時間だ。かけっこでもなんでも、すぐに張り合おうとする。
しかし、体育は、生まれもった運動神経と体格がものを言う。登藤の身長は学年別の平均身長でいえば、2年生と3年生の間。その上、運動神経はやや悪い。
傍目に見ればは、小2が小5に全力で挑んで、ジタバタしているようなもので滑稽なのだ。
そんな登藤は、いつもクラスの男子の中ではいじられ役だった。秋頃にはそれが徐々にエスカレートし、「ふざけあっている」では納まらない光景もしばしば起こるようになった。
それと比例するように、登藤は日に日に暗くなっていった。
最初のコメントを投稿しよう!