ミミミの耳

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 大学4年の秋、小さな会社の営業事務として採用された。春からは安月給ながら社会人としてスタートをきれた。働き始めれば、私の真面目さは評価されると信じていた。  愛想を振り撒きながら仕事をする同期の真由美を尻目に、私は真面目に仕事に向き合う。真由美は、ミスをしても「気を付けまーす」とか言いながらヘラヘラしてる。そんな真由美とは、すぐに差をつけるとだろうと思った。  入社して半年、私と真由美は差がついた。いや、差をつけられた。真剣に仕事に取り組んでいない真由美の方が周囲からの評価を得た。  一方、私の評価は「まぁ、頑張ってはいるよね、はぁ。」と、ため息混じりに言われる。  再び私は螺旋階段を転げ落ちる。  「どうせ私なんて…。」  それ以来、私はどこに行くにも何をするにも、ずっとマスクを着用するようになった。
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