ミミミの耳

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 帰宅して、マスクを外す。作りおきした小分けのカレーをチンして食べながら、ノートパソコンで動画サイトを立ち上げる。  最近のお気に入りは、フヌケさんという人がアップしている『不甲斐ないチャンネル』という動画。  お面で顔を隠したフヌケさんが、自分の日常をラジオ番組のように語ったり、睡眠誘導の様々な音を流したりしている。    フヌケさんのライブ放送に、チャットでコメントしたら、それに反応があると私は嬉しくなる。  『私もこういうチャンネルやってみたいです。』  何の気なしに書き込んてみた。今日は金曜日、一週間の仕事の不満が、“ネット上ではカマッテちゃんな私”の顔を出させたのかもしれない。  「ミミミさん、 いつもありがとう。お!? わぉ、 やってみたいですかー。ぜひやりましょうよ。」  書き込んですぐに、フヌケさんは私の書き込みを話題にしてくれた。  『でも、動画の作り方とかよくわからないですし。』  「だめだめ、こういうのは勢いですよ。まずチャンネルを開設して、ウィスッパーにアカウント貼り付けちゃいましょ。やってみたら簡単ですよ。やってみて判らないことあったら、僕のウィスッパーに質問してくださーい。」  憧れの野球選手に、手術を受けるよう励まされた少年。なんだか私はそんな少年のような気持になった。  私はすぐに、動画サイトのアカウントでチャンネルを開設する。  『ミミミの耳』~ミミミの声をあなたの耳へお届け~  後から考えると、勢いに任せてしまった恥ずかしいチャンネル名とキャッチフレーズだ。でも、作っているときは真剣だった。続いて、ウィスッパーの登録。今まで、人との関りを避けてきた私は、SNSはほとんど使っていない。  しかし、ウィスッパーに登録してみたところ、電話帳とリンクさせなければ、リアルな知り合いとつながることがないと知り、安心した。アカウントを作ると、さっそくプロフィールに『ミミミの耳』のリンクを張り付ける。  それらが終わると、既にフヌケさんのライブ放送は終了していた。ちょっとがっかりしながら、フヌケさんのウィスッパーにメッセージを送る。  『ミミミです。チャンネル作ってみました。』
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