ミミミの耳

1/12

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 私は仕事が楽しい。ゲームしたり、お菓子食べたり、おしゃべりしたり。それだけでお金が貰えるのだから楽なものだ。  なんて言うと語弊がある。本当は、色々と大変だったし苦労もした。  最初は全てが難しかったし、ゲームしながらしゃべろうとしても、集中しすぎて無言になったり、逆にしゃべろうとすると手元が狂ったり。自分でお菓子を食べる音を再生して聞いた時は、クチャクチャと汚くて幻滅した。  おしゃべりなんてもっと難しかった。相手もいないのに一人でマイクに向かってしゃべりだしても、すぐに話すことがなくなってしまう。何よりも、マイク相手に話すことも恥ずかしかったし、編集の為に自撮りの動画を再生するのはもっと恥ずかしかった。  それを、彼が支えてくれた。彼は私よりも先に、動画配信をしていた人だ。会ったこともない彼が、私に動画配信を勧めてくれた。そして、色々とアドバイスしてくれた。  頑張ってきてよかったと思う。今や、私のチャンネル『ミミミの耳』は、不安定ながらも生活できるほどの収入を得るようになった。  引き出しから1通の封筒を出す。中身は2年前に記入したもの。初めてチャンネルが収益化した日にこれを書いた。  必要な機材を一通り揃え、当面の生活費が貯金できたら、これを会社に提出しようと決めたものだ。ついに明日、会社に提出する。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加