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孝明はこの家の大黒柱である。しかし不遇の扱いを受けていると日々感じている。
妻の朱莉とは最近、ほとんど喋らなくなってきている。無視されているに等しい扱いだ。
娘の恵子にはリビングに居る時、「体が臭い」と軽蔑の眼差しで言われた。臭いのかと思い自分の体を嗅いでみたが、特別嫌な匂いはしない。鼻がおかしくなってしまったのかと孝明は思った。
家庭にいると肩身が狭くなる。家族に蔑ろにされるならと、孝明は家で飼っているトイプードルのハルに手を伸ばして触れる。
ハルは孝明に触れられると歯茎を全開に見せて唸り声を上げている。どうやら威嚇されているらしい。このままだと噛まれそうなのでそっと手を離す。ハルはそれでいいと穏やかな可愛らしい顔に戻った。
犬にまで嫌われるとは本当に家に居場所がない。
そして、さっきから俺にずっとぶつかってくる丸い物体。
「俺はゴミじゃない」
孝明の叫びがリビングに響いていた。
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