06. Addiction

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「あれ、寝ぼけて言ってたのか」 「……そう、みたいです」 ……これ、私の方が、罪が重い気がしてならない。 孝弘は「付き合って」とは言っていないものの、ちゃんと好意を言葉にしてくれていた。 私は寝ぼけつつ彼と同じ気持ちを返したくせして、その時の記憶は綺麗サッパリなし。 挙げ句、彼の言葉が紛らわしかったとはいえ、勘違いを(こじ)らせて連絡を無視しまくっていたわけで、なかなかに最悪な振る舞いだ。 「……ごめんなさい」 「いや……俺が言ったタイミングも悪かった。ごめん」 「ううん……返事したら、ちゃんと起きてるって思うのも無理ないし」 孝弘の立場になって考えてみると、怒らないのが不思議なくらいのやらかし具合だ。 申し訳なくて俯くと、こちらへ伸びてきた彼の手が頬に添えられ、顔を上げることになる。 「彩香」 「はい」 「もう、変にすれ違うのは嫌だから、ここではっきりさせておきたい」 「……うん」 頬に添えられていた手が下へとおりていき、私の両手を孝弘の両手がぎゅっと包み込むように握った。 大きな手のひらから伝わってくる、少し高めの体温が心地いい。 「俺は、彩香のことが好きだ」 「…………」 「だから、真剣に付き合いたい」 真っ直ぐな眼差しと、それに負けないくらい真っ直ぐな言葉。 鼓動が高鳴って、言い様のない幸福感に包まれていく。 「……彩香は?」 「私、は……」 静かに息を吸って、吐いて。 切れ長で形の良い彼の目を、真っ直ぐに見つめる。 「私も、孝弘が好き。真剣に付き合えるなら……すごく嬉しい」 言い終えるなり、照れくさくなって顔を逸らすけれど――。 「彩香」 低くて、どこか甘さのある大好きな彼の声に呼ばれると、吸い寄せられるようにそちらを向いてしまう。 「こっち来て」 腕を軽く広げられて、ソファの上を移動する。 孝弘との距離を詰めるとすぐに抱きしめられて、私の身体はすっぽりと彼の腕の中におさまった。
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