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「直球に言うと、孝弘がかなりタイプでした」
「……顔が?」
「顔もだけど、全部。最初はクールな人なのかなと思ったけど、笑った時に雰囲気が柔らかくなる感じとか……意外と天然で、ちょっと可愛くて面白いところとか、すごくいいなと思って」
「…………」
「飲んでる時から、また会えたらいいなぁとか思ってたんだ。それで……送ってもらった時に、ちょっと欲が出て。このままお別れは嫌だな、まだ一緒にいたいなとか思って、つい。……あー、待って、恥ずかしいこれ」
「…………」
マグカップをテーブルに戻し、両手で顔を覆ってソファの隅っこに倒れ込む。
孝弘の顔が見られなくて、顔を覆ったままモゴモゴと続けた。
「あとは、この間電話で言った通り。金曜は1人で飲むことが多いけど、ただ美味しく飲んでるだけだし、あんなことしたの孝弘が初めて。……それくらい、孝弘に惹かれてた」
「…………」
「以上、です……」
指の隙間をあけて、沈黙している孝弘の様子を片目で見てみる。
彼もいつの間にかマグカップをテーブルに戻して、目元を片手で覆っていた。
「あの……何か言ってほしいいんだけど」
「……ヤバい」
「ごめん、なんか初っ端から重くて……」
「そうじゃなくて。……ギュンってきた」
落ち着かない様子で胸元をさすっている彼。手の影から見える少し色白の頬は、ほんのり赤みを帯びているような気もする。
「あー……ほんとにヤバいな、彩香。中毒性が半端じゃない」
おもむろに立ち上がった孝弘は、私のすぐそばに腰を下ろして、ずいっと距離を詰めてきた。
「顔、見せて」
「無理」
「頼む」
手首をそっと掴まれて、優しいけれど強い力で顔から離される。
きっと赤くなっているだろう私を見つめた孝弘は、蕩けるような笑みを浮かべた。
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