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最初から深く口付けられて、濡れた音が小さく響いた。
熱い舌が絡み合うなか時折ちゅ、と吸われ、上顎のぞくぞくする部分を舌先が撫でる。
「……はっ」
長いキスが終わって少し乱れた息を吐くと、最後に労るような軽いキスが落とされて、私は目を細めた。
「わかった」
「ん?」
「彩香の気持ち、わかった。嬉しいけどすげぇ照れるし、堪んなくなる」
「……うん」
伝わったなら何よりだ。
さっきは孝弘の反応に気をよくして若干ハイになり小っ恥ずかしいことをあれこれ平気で言ったけれど、今になって遅れて羞恥心が湧き上がってくる。
「なに。あんなこと言っといて、照れてんのか」
「いや、ちょっと……対抗心でぶわーって口に出してみたけど、正気に戻ると恥ずかしすぎて」
「ほんとそういうとこだぞ彩香」
「……あ、なるほど」
孝弘が言っていた『大胆かと思えば意外と照れ屋』という部分を地でやってしまっていた。
彼はこういうのに弱いのか、なんて学びを得られたのはいいが、これをやると私のメンタルにも負担がかかるので、奥の手として取っておきたい。
そんなことを思っていると、身体を起こした彼に手を差し出される。
手を掴むと引っ張り起こされて、私たちはまたソファに並んで座った状態に戻った。
「彩香、土日暇?」
「うん。最近忙しかったから、久々にゆっくり休むつもりで」
「なら、俺の家に来て。……それか、俺がこっち泊まっていいなら泊まるけど。でも、ベッドが少し狭いんだよな……」
「あ、どっちにしろ泊まるのは決定事項なのね」
「駄目か?」
「ううん、私も一緒にいたいから、駄目じゃない」
「…………」
孝弘が目を瞬き、急に無言になる。
「……どうかした?」
「いや……彩香、なんか変わったなと思って。前より素直で……さらにヤバい」
「……これまで付き合ってるわけじゃないと思ってたから。うざいとか重いとか思われないように、あんまり気持ち言わないようにしてて……」
「そういうことか……。これからが楽しみ過ぎて、ニヤける」
拳で口元を隠した孝弘が、優しく目を細めた。
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