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先週末――すれ違いを修正してリスタートを切り、孝弘の家に泊まった。
でも、私の「待遇の良いセフレ」発言があったせいか、一応は「付き合いはじめて初日」にあたるからか、2泊ともそういう行為はなかった。
昨日もただ抱きしめ合って眠るだけで、それも穏やかで幸せな気持ちに浸れるから好きなんだけれど、それ以上も欲しくなってしまう。
「……孝弘」
振り向いて彼の首に腕を回し、自分から軽くキスをしてみる。
ぱちぱちと少し驚いたように目を瞬いた彼は、次の瞬間ニッと笑って、私を軽々と抱え上げた。
「わっ!」
毎度毎度、「よいしょ」のようなタメもないままにスッと抱えあげられるから、びっくりしてしまう。
大股でリビングを突っ切った孝弘は、私を抱えたままで器用に電気を消し、寝室へ入った。
「……いい?」
付き合いはじめてからでも、ちゃんと同意を取るあたりが彼らしい。
こういうところも海外文化の影響だったりするのだろうか、なんて思いつつ、私は小さく頷いた。
微笑んだ孝弘は、私をベッドにそっと降ろすと、部屋の隅にある間接照明を灯す。
ほわりと暖かな光が室内を優しく照らして、お互いの表情がはっきり見えるくらいの明るさだけど、これくらいなら恥ずかしさはそんなにない。
「ここ、おいで」
ベッドに腰掛けた孝弘が自分の太もものあたりを軽く叩いて示す。
座れということか、はたまた膝枕か、それ以外か。
わからずに微かに首を傾げると、「跨ぐ感じで」と付け加えられる。
「…………」
おずおずと、言われた通りに、孝弘の腿を跨ぐようにして向かい合わせで座る。
重くないようにと少し腰を浮かせていたけれど、ぎゅっと抱き寄せられて、身体をまるごと彼に預ける状態になった。
「重くない?」
「全然。軽くて心配になる」
私の手首を優しく掴み、直径を測るようにする孝弘。
「腕も足もほっそいし」
「そうでもないよ」
日頃から太らないように努力はしているけれど、それでもモデルなんかに比べたら普通に太いだろう。
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