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半分泣きの入った「無理」は今度こそ聞き入れられて、孝弘はぐったりしている私が服を着るのを手伝ってくれる。
2人とも寝間着を着終えるころにはだいぶ呼吸も落ち着いていたけれど、疲労感はより色濃くなっていて、私は力なくベッドに倒れ込んだ。
「孝弘の“優しくする”は二度と信じない……」
「ごめん。彩香がぐちゃぐちゃになってるところにすげぇ興奮した」
目が本気だった。
思わずちょっと身を引く。
「ヤバい人を彼氏にしちゃったよ……」
「こら、逃げるな。彩香が“もう出して”とか言うからだろ。あれで全部吹き飛んだぞ」
「あ、あれは……もう無理だから、早く終わってほしくて……!」
あの時はいっぱいいっぱいで、思い浮かんだ言葉をそのまま口走っていたけれど……。
落ち着いた今となっては、とんでもないことを言った羞恥心で身悶えしそうになる。
「もうほんとに無理……孝弘とするとなんであんな気持ちよくなっちゃうんだろう……」
「…………」
顔を覆ってぶつくさ呟く。
……これは本当に切実な問題だ。これまで、我を忘れるほどの快楽に溺れることなんてなかったはずなのに……。
このままだと、そのうち取り返しのつかない醜態を晒してしまいそうで怖い。
というか、今日もだいぶひどい姿を見せてしまったような……と気になって、指の隙間からちらりと孝弘を見てみると。
「……どうしたの?」
孝弘は片手で目元を覆って、深く息を吐いているところだった。
「……耐えてる」
「何に?」
「無理やりもう1回したくなる衝動」
「……っ!」
なんでそうなった。
再びちょっと身を引くと、孝弘が目元を覆っていた手を退けて、恨みがましい視線を向けてくる。
「俺とするの、そんなに気持ちいいんだ……とか思ったら、滾った」
「……あ」
そういえばさっき、そんなことをぽろりと言ってしまった気がする。
「大丈夫、もうしないから」
「……うん」
これ以上口を開いたら、さらにやらかしてしまいそうだ。
布団をかぶった私は、「おやすみ」と小さく呟いて目を閉じる。
孝弘からも同じ言葉が返ってきた記憶を最後に、疲れ切った身体は深い眠りへと沈んでいった。
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