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02. 深まる関係
日曜は孝弘が仕事から戻ったあと映画館に行って、夜ご飯は以前彼がおすすめしていた個室イタリアンへ。
「明日は朝送れそうだから」とのことで日曜も泊まって、月曜日に駅の近くでお別れする。
「行ってらっしゃい」
土日とは逆で、今度は私が見送られる番。
久方ぶりに掛けられる言葉に、懐かしさと嬉しさの混じった少しくすぐったいような感覚になって、自然と頬が緩んだ。
「行ってきます」
車を降りて駅に向かうと、ふわふわした休日モードから会社モードへと、徐々に気持ちが切り替わっていく感じがする。
媒体のリニューアル準備もそろそろ大詰め。
気合を入れて頑張らないといけない。
▼
午前中はいくつかミーティングを挟みながら企画のチェックなどをして、13時過ぎ。
そろそろお昼ごはんに出ようかなと考えながら、休憩室の前を通りかかると――。
「うう……チケットのご用意ができていますように! いや、できた! できている!!」
「……何してるの?」
テーブルの上に置いたスマホに向かって、謎の言葉を放ちつつ一生懸命に祈っている御園さん。
それを、横山さんが面白そうに眺めている。
「ほら、LIBRAのライブ。今日の昼に当落メールが届いてるんだよ」
「ああ、それで……」
「祈ったところで、もう届いてるメールの内容が変わるわけじゃないのにね」
くすくす笑う横山さんには目もくれず、御園さんは「私はチケットをご用意されている女!」と必死の表情で祈っていた。
「あ、工藤さ〜ん! 私無理です、工藤さんがメール見てください〜!」
「えっ」
「結果を見る勇気が出ないんです……っ」
「ええ……」
当選していたならいいけれど、もし落選していた場合にはどう伝えればいいのか。
固まっていると、横山さんが「じゃあ俺がやろっか」と立候補してくれた。
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