02. 深まる関係

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「お願いしますぅぅ……」 祈りを捧げるように両手を組んで、額をそこに当てる御園さん。 パスされたスマホを操作した横山さんは、コホンと軽く咳払いをする。 「それでは、発表します」 「はい!」 「えー、なんと! 今回! チケットが……」 「…………」 「ご用意されま………………せんでしたー!」 「いやァァァ――!!!」 御園さんが撃沈した。 「ちょっと横山さぁん! なんでそんなゴチみたいな形式で発表したんですかぁ!」 「一息に言うのもちょっとなぁと思って」 「う〜〜……もうイヤ、私頑張れない……今月はあと3時間しか残業できないぃぃぃ……!」 がっくり脱力して天を仰ぐ彼女は、ちょっと涙目になってしまっている。 彼女がどれほどLIBRAのライブを楽しみにしていたか知っているから、もう私に迷いはなかった。 ――関係者ゾーンに伝手があることを話そう。 「……御園さん、」 「元気出して」 私の言葉に続けるように、横山さんが声をあげた。 何を言うのだろうかと思っていると、彼はひらりと手を挙げる。 「チケットをご用意された人がここにいます」 「え……」 固まる御園さんと、得意げな顔の横山さん。 しばしの沈黙のあと、御園さんが目を据わらせて、拳を握る。 「つまり、殺せって言ってるんですか? 殺して奪えと……?」 「物騒! そうじゃなくて、チケット1枚余ってるから一緒に行く?ってこと!」 「え………、神……?」 「しかもAブロックだよ」 「きゃ〜〜! 神の中の神! ゴッド横山!!!」 先程の殺害予告はどこへやら。 横山さんをキラキラした目で見つめ、(あが)(たてまつ)る御園さんは実に現金だ。 「あ、でも、それだと工藤さんが……」 こんな時でも私のことを忘れない御園さんは、本当にいい子だなぁと温かい気持ちになる。 「私はいいよ。いい場所なんだったらなおさら、御園さんみたいな熱心なファンが行くべきだから」 「うう……次は絶対当てるんで、今度こそ一緒に行きましょうね……!」 「うん、そうだね」
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