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その後は、一気に元気を取り戻した御園さんとランチに出ることになった。
横山さんはミーティングの時間が近いのでコンビニで済ませるらしく、そこで解散する。
「今日は何にしよっか」
「久しぶりに和食行きます?」
「いいね」
向かった先は、以前LIBRAの生放送出演を目撃することになった和食処だ。
日替わり定食の“若鶏のみぞれあんかけ”が美味しそうなのでそれを頼んで、お茶で喉を潤す。
「いやぁ、ほんとにすみません。チケット運なくて……」
「本当に気にしないで。私は最近聴き始めたばっかりだし。御園さんが行けることになってホッとした」
「ありがとうございます……。横山さんには本当に感謝ですね。金一封差し上げるくらいしないと」
「……チケット代は払うにしても、それ以上はたぶん受け取らないと思うよ」
「やっぱそうですよねぇ。んー……ご飯でも奢りますか」
「うん、それがいいと思う」
……この間、御園さんは“横山さんは工藤さん狙い”と言っていたけれど、今日の様子を見ていて、やっぱり違うんじゃないかと私は睨んでいる。
「そういえば、工藤さんは例の彼と仲直りしたんでしたよね。横山さんはどんまいって感じですけど、良かったです!」
「ありがとう。……あと、ちゃんと付き合うことになって」
「ええっ! おめでとうございます! 工藤さんからそういう話聞けるなんて、ちょっと感激……」
「ええ……そんなに珍しい?」
「なんか、工藤さんって綺麗なのに男の気配がないっていうか……。色恋沙汰にあんまり興味ないのかなって感じだったので、びっくりしてます」
2つ下の御園さんが入社したあたりで、既に前の彼氏とは自然消滅寸前だった。
彼女が知る私は確かに、ほぼずっと男の影ナシの状態だ。
「彼氏、どんな人なんですか? 私的には、長身のイケメンのイメージです」
「……うん、まあ。そんな感じかな」
「ひゃ〜! 写真あったりします?」
「写真は……撮ってないね」
「ええ〜! 今度撮ったら見せてください! お仕事は何されてるんですか?」
「…………」
御園さんの無邪気な問いに、私の答えがぴたりと止まる。
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