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――21時を少し過ぎた頃。
「……お疲れ」
「おお! ありがと、工藤さん」
月曜から残っている人は少なくて、島には私と横山さんだけ。
私は下のコンビニで買ってきたコーヒーと、1口サイズのお菓子を差し出した。
さっそく1つ食べながら、横山さんがニッと笑う。
「この間の差し入れのお返し?」
「そんなところ。あと、ちょっと話したいことがあって」
「話したいこと?」
不思議そうにこちらを見る彼に、少し声を潜めて尋ねてみる。
「直球に聞くけど……御園さんのこと、気になってる?」
「えっ!」
目を見開いた横山さんは、周囲を気にするようにきょろきょろと見回した。
近くの島に人がいないことを確認して、そっと頷きを返す。
「……バレた?」
「もしかしたら、ってくらい。別に露骨だったからとかじゃないから、そこは安心して」
「はぁ〜、よかった」
横山さんは誰にでもフレンドリーだしノリがいいから、むしろかなりわかりづらい方だろう。
「なんで気付いたの?」
「LIBRAのチケット、最近当たりにくいんでしょ。それをあげるってことは、まあそれなりに特別なのかなって。あと、ランチの時とか、御園さん見てる気がしてたから」
「うわ……、めちゃくちゃバレてるなぁ。入社して早々、年下の子に手出そうとするのはちょっとな〜と思って、俺、割と気をつけてたんだけど」
「気付いてるのは私ぐらいだろうから大丈夫だよ」
ふぅ、と軽く溜息を吐いた彼は、気持ちを落ち着けるようにコーヒーへ手を伸ばした。
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