02. 深まる関係

6/16
前へ
/342ページ
次へ
私もカフェラテを一口飲んでから、もう1つ、伝えておくべき事柄を口にする。 「それから、1つ残念なお知らせがあります」 「……え、なに。怖い」 「御園さん、横山さんが私狙いだと勘違いしてるんだよね」 「えっ」 「だから、頑張って早めに軌道修正した方がいいよ」 「マジか……」 「まあ、確かにちょっと紛らわしい感じではあったね」 「……俺が直で行くと駄目だったとき会社で気不味くなりそうだし、御園さんに超慕われてる工藤さんに橋渡ししてもらおうかなーとか思ってたんだ。(よこしま)な企みが裏目に出た……」 「なるほど、そういうことか」 以前のランチで社内恋愛の話になった時、部長に「会社でゴタゴタ起こすなよ?」と言われた横山さんは「その辺は俺だって弁えてますよ」と言っていた。 直接アプローチする前に私から探りを入れようとするやり方は、上手くいかなかった場合が大変な社内恋愛において、かなりいい手だと思う。 ……本人に勘違いされてしまっては、元も子もないけれど。 「ちなみに、現状だと俺に望みある?」 「んー……割とあるんじゃないかな。横山さんのことかなり褒めてたし」 ――『横山さん、いい人ですよ。性格いいし見た目も可愛い系の割とイケメンで、仕事できるし結婚願望強いし』 私に横山さんをプッシュして、というのが若干残念なところではあるけれど、あの言葉には御園さんの主観が大きく反映されているはずだ。 あれだけ淀みなく良いところを羅列できたのだから、彼女が横山さんにかなりの好感を抱いているのは、まず間違いない。 「じゃあ、頑張ってみよっかな」 「うん、頑張って。私は御園さんが幸せになるならなんでもいいから」 「おー、御園さん愛されてるねぇ」 笑い合った私たちは、なんとなくコーヒーの紙コップをコツンとぶつけて乾杯する。 ……私と孝弘のような残念なすれ違いを防げたことに少し満足しつつ、「もし2人が結婚することになったらどっちか異動になっちゃうのかな」なんて気の早い心配をするのだった。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9205人が本棚に入れています
本棚に追加