【第一部】01. 金曜夜のイレギュラー

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「工藤さん、お昼行きませんか?」 土日の休日を挟み、迎えた月曜日。 13時を回り、ランチへ向かう人が多くなってきた頃合いでそう声を掛けてきたのは、同じ部署で働く親しい後輩、御園(みその)さんだった。 「うん、行こっか」 頷いて立ち上がった私は、鞄を肩に掛ける。 「今日は何にする?」 「強いて言うならあっさりしたものが良いです」 「んー、じゃあ裏手の和食屋さんかな」 「いいですねぇ~!」 会社内にはテイクアウトのみのカフェがあるけれど、食堂の類はない。 ランチは買ってきて各部署の飲食スペースで食べるか、外食で済ませるかだ。 会社周辺には飲食店が多くて飽きないので、ランチは日々のちょっとした楽しみ。 今日は和食処へ向かうことにして、私たちは会社を出た。 「いらっしゃいませ。2名様でよろしいですか?」 「はい」 「奥のお席へどうぞ」 ピークタイムを過ぎたのか、席に余裕がある店内。 客はほとんどが付近の会社から昼食を食べに来ている会社員なので、BGM替わりのテレビ音声がある程度聞き取れるほど、静かで落ち着いている。 半個室に通されて早速メニューを見てみると、日替わり海鮮丼は鉄火丼。美味しそうだ。 「工藤さん、決まりました?」 「うん、日替わりの海鮮丼にする」 「お、一緒ですね。了解です」 近くにいた店員を呼び止めて注文を伝えると、御園さんはおもむろにお茶をぐいっとあおり、肘をついて少し身を乗り出した。 口元には、何かを企むような不敵な笑みが浮かんでいる。
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